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Sounds of Infinity:
Bernie Krause - Citadels Of Mystery
探求する音の建築物
「Sounds of Infinity」では、音楽の歴史に埋もれた名盤や、時代を超えて語り継がれるクラシックなアルバムを紹介します。このシリーズでは、音楽の無限の可能性と、レコードに刻まれた忘れられない瞬間を掘り下げます。
「Sounds of Infinity」の初回では、電子音楽のパイオニアBernie Krauseによる傑作アルバムCitadels of Mysteryを取り上げます。大自然の音とシンセサイザーが織りなす壮大な音の世界を解説し、リスナーを音楽の旅へ誘います。
1979年にリリースされたBernie Krauseのアルバム Citadels of Mystery は、電子音楽とフィールドレコーディングを融合したユニークな作品であり、今もなおその魅力を失わない一枚です。このアルバムは、自然音とシンセサイザーの先進的なアプローチを通じて、音楽の可能性を広げたKrauseの革新性を象徴しています。
Bernie Krauseとは誰か?
Bernie Krauseは、電子音楽のパイオニアであり、フィールドレコーディングの第一人者として知られています。元々はフォークミュージシャンとしてキャリアをスタートさせた彼ですが、1960年代には電子音楽デュオ「Beaver & Krause」の一員として活動。モーグ・シンセサイザーをいち早く取り入れたその作品は、数々の映画音楽やコマーシャルに使用されました。
特に、自然界の音を「音楽」として捉える視点を持ち込んだことで、Krauseは音楽と環境の関係性において革命をもたらしました。彼のフィールドレコーディングは、地球上の多様なエコシステムを反映し、現代の音楽や環境保護活動に多大な影響を与えています。
"Citadels of Mystery"の世界観
このアルバムは、ペルーやメキシコの古代遺跡からインスピレーションを受けた音の旅路を描いています。Krauseは、現地で収録した自然音や遺跡の環境音をシンセサイザーと組み合わせ、まるで聴き手をタイムスリップさせるかのようなサウンドスケープを構築しました。
トラックレビュー
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Side I: Machu Picchu Suite
A1. Festival of the Sun (6:11)
アルバムは、インカの太陽祭をテーマにした壮大なトラックで幕を開けます。フィールドレコーディングされた自然音とシンセサイザーが融合し、古代の儀式の荘厳さを感じさせます。風と太鼓の音が祭りの活気を想起させ、聴き手をアンデス山脈の頂へと導きます。
A2. Heights of Machu Picchu (3:58)
この曲は、マチュピチュの壮大な景観とその霧に包まれた静けさを描写しています。シンセサイザーの柔らかな旋律が、遺跡の神秘性と歴史的重みを見事に表現しています。
A3. Flight to Urubamba (4:58)
スリリングなこのトラックは、ウルバンバ渓谷への空の旅をテーマにしています。テンポの速いリズムとエレクトロニックな音色が、旅の冒険心と高揚感を鮮やかに描き出します。
Side II
B1. Jambo, Jambo (Zimbabwe, Africa) (7:08)
アフリカ、特にジンバブエの豊かな音楽文化にインスパイアされた曲です。フィールドレコーディングで収集された動物や自然の音と、シンセサイザーのリズムが融合し、アフリカの躍動感と大地のエネルギーを伝えます。
B2. Stonehenge: A Mid-summer's Day Dream (3:29)
ストーンヘンジの夏至の日をイメージした神秘的なトラック。エコーの効いたシンセサイザーと静かなリズムが、古代の祭壇での儀式や瞑想を思い起こさせます。この曲は、時間と空間を超えた瞑想的な体験を提供します。
B3. Citadel, Ay Bobo (5:09)
アルバムの締めくくりとなるこの曲は、壮大なシンセサウンドとドラマチックな展開が特徴です。「Ay Bobo」というフレーズが、祈りや感謝を表しているように響きます。アルバム全体を集約するような感動的な終わりを迎えます。
音楽的特徴と影響
Citadels of Mysteryは、モーグ・シンセサイザーを中心に構成されていますが、その音のテクスチャは極めて多彩です。自然音と電子音の組み合わせは当時としては斬新であり、現代のアンビエントやエクスペリメンタルミュージックの礎を築いたと言えるでしょう。
また、アルバム全体にわたって「音の建築物」というコンセプトが感じられます。一つ一つの音が精密に設計され、全体として壮大な建築物を構築するような感覚です。
現在では、環境音楽やフィールドレコーディングが音楽の一つのジャンルとして確立されていますが、Citadels of Mysteryはその先駆けと言える存在です。さらに、この作品は、単なるリスニング体験を超えて、音楽が自然環境や文化をどのように表現できるかを問いかけています。
Bernie Krauseの作品は、音楽好きだけでなく、自然や文化に興味がある人々にも強く響くものです。特に、このアルバムはヴィンテージレコードとしても価値が高く、コレクターの間でも人気があります。
Citadels of Mysteryは、音楽の境界を押し広げた象徴的なアルバムであり、聴き手に新たな音楽体験を提供します。Bernie Krauseの革新性と、彼が生み出した音の旅路にぜひ耳を傾けてみてください。このアルバムを聴けば、あなたもまた音楽と自然の新たな関係性を発見するでしょう。