
Sounds of infinity:
Jah Shaka と Phebes
UKサウンドシステムが生んだ
ジャングル/ドラムンベースの源流
Jah Shaka: UKサウンドシステムの伝説
1980年代のロンドン。アンダーグラウンドのクラブシーンで、爆音のダブ、スピリチュアルなルーツ・レゲエ、重低音のグルーヴが鳴り響く空間があった。その中心にいたのが、UKサウンドシステムの伝説、Jah Shaka。
本名は明らかにされていないが、彼はジャマイカのクラレンドン教区で生まれ、8歳のときに家族とともにイギリスに移住し、ロンドン南東部で育った。1970年代初頭に自身のサウンドシステム「Jah Shaka」を設立し、独自の音楽スタイルとスピリチュアルなメッセージを通じてUKのサウンドシステム文化を形成した。
Shakaのプレイは、単なるDJセットではなかった。フロア全体が音の波に包まれ、低音が身体に響き、観客は目を閉じて音と一体化するトランス状態に陥る。
Shakaが築いたこのUK独自のサウンドシステム文化は、やがてジャングル、ドラムンベース、そしてブリストル・サウンドへと進化していくことになる。
UKベースミュージックの源流
1980年代〜1990年代初頭にノースロンドンに位置した、Phoebesは、Jah Shakaのサウンドシステムが最も熱狂的に支持された場所だった。ここでは、ダンスというよりも、まるで音の儀式のような体験が繰り広げられていた。
Phoebes の熱狂的な伝説
1. 爆音のダブ・サウンドシステム
- Jah Shakaの圧倒的な重低音が壁を震わせ、身体を揺さぶる
- 低音の振動がフロア全体に響き渡り、観客はトランス状態に
- スピーカーの前に立つと、心臓の鼓動すらシステムとシンクロするような感覚
2. 深夜から朝まで続く「ダブ・マラソン」
- セットは途切れることなく、Shakaの手によってダブミックスが延々と展開
- 一晩中フロアを揺らし続けるサウンドが、聴衆を別次元へと誘う
- フロアの観客は、まるで祈るように低音の波に身を任せる
3. ルーツ・レゲエとUKベースミュージックの架け橋
- UKの若者たちがルーツ・レゲエのディープな精神性に目覚める場となった
- ここに通ったDJやプロデューサーたちが、ジャングルやドラムンベースの礎を築くことになる
PhoebesでのJah Shakaのプレイは、単なるクラブミュージックの夜ではなく、UKのサウンドシステム文化における最も神聖な体験の一つとして語り継がれている。
Phoebes での Jah Shaka 代表的プレイリスト
このクラブで流れた、Shakaの象徴的な選曲を再現するプレイリスト。
ジャングル/ドラムンベース誕生への布石
PhoebesでJah Shakaのサウンドを浴びた若者たちは、後に90年代のUKベースミュージックを牽引する存在となる。
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Goldie(Metalheadz)
→ 「Shakaのダブサウンドがなければ、ジャングルは生まれなかった」 -
LTJ Bukem(Good Looking Records)
→ 「Shakaの空間的なダブのミキシングが、ドラムンベースの根底にある」 -
Roni Size & Reprazent(Bristol Movement)
→ ブリストル・サウンドの進化に影響を与えた
Jah Shakaの深く瞑想的なダブ・サウンド、重低音のグルーヴ、リズムへのこだわりは、そのまま90年代のジャングル/ドラムンベースの特徴として受け継がれる。
ジャングルの特徴的なブレイクビーツの上に、サブベースとダブのエコーが絡み合うスタイルは、まさにShakaのサウンドシステムが持っていた要素そのものだった。
参考文献
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The Guardian - Jah Shaka Obituary (2023)
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Voice Online - Legend and Icon: Jah Shaka Passes Away (2023)
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Alt Africa - Reggae Loses a Legend: Jah Shaka Has Died (2023)
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Reggaelicious - Jah Shaka